施主支給リフォームで失敗しないために押さえておきたいリスクと注意点

施主支給リフォームのリスクと注意点

この記事では施主支給リフォームを考えられている方向けに、リフォーム現場の管理業務をしている著者が「施主支給はかなりリスク高いよ」、「これだけは絶対に押さえておいてね」というポイントをご紹介しています。

費用を抑えるための案として使われる施主支給ですが、はっきりいうと、かなり上級者向けです。

工事の流れや最低限のマナーを知っておかないと、業者側とトラブルになってしまう可能性もあるので、施主支給を検討されている方は、ぜひ最後までお読みいただければと思います。

施主支給とは?:

「そもそも施主支給って何ぞや?」方向けに簡単に説明すると、通常であれば工務店が仕入れる材料や商品を施主自らが仕入れて現場に支給することをいいます。

リフォーム費用には、『商品などの材料代』と『職人さんが作業する手間代』が含まれており、それぞれに業者側の利益が計上されています。

手間代をカットすることはできませんから、『商品などの材料代』を自ら安く仕入れることで、予算を削減しようということです。

このご時世、ネットを利用すればいくらでも商品を探せますよね。

できるだけ安く商品を仕入れることができれば、その分リフォーム費用も抑えることができるというわけです。

よく施主支給されるもの:

私が実際に施主支給されたもので多いのは、

  • 給湯器(エコキュート)
  • キッチン
  • トイレ
  • 玄関ポーチのタイル
  • 照明器具

などなど、上記のようにわりと高価なものが支給されています。

多かれ少なかれ、施主支給をされる方はいらっしゃいますので、費用を抑えるための案としてかなり認知されている印象です。

施主支給で安くなるとは限らない:

冒頭でも少し触れましたが、施主支給は業者側とトラブルに発展しやすい上級者向けの方法です。

その1つが、『実はそれほど費用が抑えれなかった』というパターン。

費用削減のためにリスクを負って施主支給をするのに、削減できなければ本末転倒ですよね。

わりと起こりえることですので、しっかり予習しておいてください。

工賃のみにすることで割増しになる:

先ほど、リフォーム業者は『商品などの材料代』と 『職人さんが作業する手間代』 に利益を計上していると説明しました。

ここから施主支給で材料代をまるまる省かれてしまうと、残る利益確保の手段は『職人さんが作業する手間代』のみになってしまいますよね。

つまり、通常であれば確保できているはずの利益を出せないわけですから、当然ながら割高になってしまうのです

  • 材料も手間も業者負担:利益も見込める
  • 手間のみ業者負担:利益が薄いため割高

基本的に業者は、リフォームというサービスを “材工” で提供しているため、手間(=工賃)だけというのは薄利になってしまうんですね。

工務店は商社から安価で仕入れている:

ちなみにネットの方が安いといわれていますが、実際のところはそこまで変わりません。

例えば大手商社であるLIXILのキッチン『シエラ』ですが、ネットで調べると、おおよそ定価の60%から70%引き程度の値段で購入できるようです。

対して、私が勤めているリフォーム会社でも卸業者を通じてですが、定価の72%引きで仕入れることができ、利益を計上したとしても60%引き程度で提供しています。

「70%引きと60%引きだと10%も差があるじゃないか」と思われるかもしれませんが、ご自身で段取りをする手間を考えると工務店に丸投げしても変わらないと思いませんか?

納期遅れで追加費用がかかってしまう:

施主支給のトラブルで圧倒的に多いのが『材料の納期遅れ』です。

リフォームでは工程管理がシビアにされており、現場の動きが止まらないように材料の搬入や職人さんの段取りを行っています。

特に、材料に関しては、予定より早めに入れてしまうと作業スペースがなくなってしまうことが多いため、必要なタイミングを見計らって搬入する必要があるんですね。

この必要なタイミングをお施主さんと共有していても、材料が搬入されていないことはよくあって、材料がないために職人さんが作業できず、後日改める(=出戻り)という最悪のケースになってしまいます。

当然ですが、余分に職人さんに来てもらう必要があるので、職人さんの手間代と経費は追加請求されることになってしまうというわけです。

搬入を誰がするのか明確にしていない:

些細なことですが、材料の現場搬入を誰が行うのか?ということもトラブルの原因として考えられます。

基本的に材料は現場へ直送するわけですが、支給することだけに満足してしまって、搬入を忘れてしまっているパターンですね。

トラックの運転手は現場の中までは搬入してくれませんし、大型の商品であればあるほど、 ”運び手” が必要になります。

「それくらいしてくれても…」と思われるかもしれませんが、人間が動く以上、必ず人件費として追加請求されますのでご注意を。

  • 工務店が搬入:人件費が別途かかる
  • あなたが搬入:追加はかからない

施主支給をするなら搬入まで担当するというところまで1セットで押さえておきましょう。

施主支給でよくあるトラブルの回避案:

商品変更で工事がやり直しに:

施主支給はあなたご自身で気に入った商品を選べるというのも大きなメリットですが、リフォームが始まってから予定していた商品を変更するということも考えられますよね。

  • もっといい安価な商品を見つけた
  • 今後のことを考えて違う商品にした

理由はいろいろあるでしょうが、問題は工事が始まっているという点

キッチンやトイレなどよく施主支給されるものに共通しているのは水まわりや設備関係の商品ということです。

リフォーム工事では一般的に、工事の序盤で設置予定の商品に対する配管や配線の仕込み工事を行いますので、着工後の変更は仕込み工事が終わってしまっていることが多いんですね。

設置商品ごとに仕込みの位置は違いますから、やり直しをしなければいけないというわけです。

トラブル回避案:

上記の回避案としては以下の通り。

  • 一度決めたら商品を変更しない
  • 仕込みをやり直さなくていい商品にする

商品を変更しないのが一番ですが、変更するなら仕込み工事をもう一度やり直さなくてよい商品を選びましょう。

もし分からなくても、工務店に相談すれば現状の商品と同じ仕込み寸法で設置可能か教えてくれますよ。

必要な部材が入っていない:

せっかく商品を購入しても、ネット購入だと必要な取付部材が入っていないというケースはよくあります。

商品だけがあっても、取付部材がなければ設置することはできません。

そのために段取りをしていた職人さんが出戻りになることは避けたいですよね。

トラブル回避案:

上記の回避案としては以下の通り。

  • 梱包されている部材リストを共有する
  • 購入する商品の販売ページを共有する

販売店に問い合わせをすれば、購入する商品に梱包されている部材の一覧表を教えてもらえますので、それを工務店と共有していれば基本的には大丈夫です。

問い合わせをするのが手間であれば、「ここから購入します」と販売ページを共有するのもアリ

工務店側も職人さんに出戻りをさせるのは避けたいので、部材リストの確認をしてくれますよ。

メーカー保証が付かない:

施主支給をされるときに気を付けなければならないのが『保証がつかない』という点です。

水まわりや設備商品であれば、2年や5年のメーカー保証が付くのが一般的ですが、これは「メーカー側の職人さんや提携業者が設置を行うことで保証しますよ」ということなんですね。

施主支給であれば、設置はメーカー側の職人さんはしませんので保証は付けれないのです。

「メーカーの職人さんが施工したけど不具合が出た」ということであれば施工側のミスということで補償対象になりますよね。

販売と施工が別だと、商品自体に不具合があるのか、施工が悪いのか、運搬中に問題があったのか、明確にすることができません。

つまり、責任の所在がはっきりしないので保証をつけれないというわけです。

トラブル回避案:

上記の回避案としては以下の通り。

  • 施工自体も施主支給にする
  • 施主支給をあきらめる

ネットで購入される際に、施工を含むか含まないかを選べることが多いので、施工までをセットにすると販売会社の保障を付けてくれるケースがあります。

メーカー保証とは違いますが保証がないよりはいいのではないでしょうか

別の案としては、元も子もないですが施主支給をあきらめるということ。

やはり、水まわりや設備商品は高額ですから、できればメーカー保証はつけたいものです。

このあたりの感覚は使い方やお財布事情にもよりますから、どちらを選択するかしっかりとした検討が必要ですよ。

まとめ:

ここまで施主支給のリスクや注意点についてご紹介させいただきましたが、いかがでしたでしょうか?

うすうすお気づきかもしれませんが、施主支給はほとんどの業者が否定的です( 私自身も施主支給を断りはしませんが「やりにくい」というのが正直なところ)。

予算の都合もあると思いますが、トラブルになるのは極力避けたいですよね。

施主支給リフォームはかなり体力を使いますので、検討されている方は十分ご理解いただいたうえで業者に依頼するようにしてくださいね。